外資系ドール会社のトップ人形師を辞めてゼロから創業の道へ、中国ベテランドール造形集団の「龍魂人形社」CEO江上小龍氏に直接インタビュー!

インタビュー

■メーカープロフィール
・会社名:馴龍文化発展有限公司
・メインブランド:龍魂人形社
・サブブランド:CharmDoll、謎凰
・HP:www.ls-doll.com
・公式SNS(龍魂):@LoongSoulDoll
・公式SNS(CD):@CharmDoll_CD
・所在地:中国深セン
・設立:2009年

(※以下内容は、龍魂人形社CEOの江上小龍氏から直接お話を聞かせて頂きました)

──さっそくですが、会社設立の経緯を聞かせてください

「弊社の設立は2009年です。最初の頃は、深センで「龍魂彫塑品工作室(スタジオ)」という名義でブランドを立ち上げました。商品の開発・販売を展開していくうちに、業界とドールの愛好家から高く評価されたおかげで、スタジオの規模も徐々に拡大し、中国の北京・上海・重慶など大都市で実店舗をオープンすることができました。

海外のドール愛好家たちにも商品を提供できるように、海外販売専用のECサイトも構築しました。そして2014年、さらなる発展を求めて、スタジオを正式に法人化して、「馴龍文化発展有限公司」として運営をはじめました」

──ブランド名の由来についてお聞かせください

「メインブランド名の「龍魂人形社」ですが、私たちはドールを作り上げることは、クリエーターたちが心血を注ぎ、ドールに“魂”を吹き込む仕事だと考えています。それがブランド名の中の「魂」の由来です。また、中国伝統的な服装文化をドールで表現しようという思いがありますので“龍”という言葉もブランド名に入れました。それが「龍魂人形社」というブランド名として誕生した由来です。

サブブランドの「Charm Doll」は、2012年に創立されました。そちらも私が社内新規チームを結成し立ち上げたブランドです。ブランド名にある“Charm”は、 “魅力”、“魔力”、“人を惹きつける力”を指しています。目を奪われるような魅力的なドール作品を愛好家たちにお届けしたい、というのがコンセプトです」

──よろしければ、ご自身の経歴もお聞かせください

「自分は幼い時から「根彫り芸術(※中国の伝統的木材工芸品)」と共にある家庭環境で育ちました。その影響で、小さい頃から彫刻技術を修業していました。地道な修練を重ねて造形技術を習得し、当時は中国の木彫界にて活躍していこう、と思っていました。

だけど自分はやはり新しい物事に挑戦したいタイプで、木彫の実技を身につけた後、泥塑工芸(※泥を材料にした中国の伝統工芸品)も習いました。それでも満足できず、芸術表現への追求をしていきたい、そこから将来の自分が進むべき道を模索しようと、故郷を離れて大都会の深センにやって来ました。

深センで、自分の腕が、とある外資系のBJD会社に見込んで頂き、採用までに至ったのです。多分当時の自分と、自分の同期を含めた面々は<中国最初のBJDドール人形師>でした。自分は入社後、幼い時から磨き上げた実力が評価されたおかげで、大勢の同期から抜擢され、一時的に社内のトップ人形師ともなりました。だけど、その時から、自分はその企業の理念と合致しない部分があると気がつきました。特に我慢できなかったことは、商品を格好よく見せたい、高く値付けしたい、などの理由で、自分が作ったドール作品を全然関係がない外国人デザイナーの名義で宣伝されたことです。自分が心血を注ぎ生み出したドールが、他人の名義になる、それはとても心が痛みました。

やはり自分の作品は自分のブランド、自分のネーミングで発表したい、またドールという趣味を中国の一般大衆へも普及したい、そう決心し、会社を辞めて自分で創業する道を選んだのです」

──作品創作においての発想の仕方は?

「メインブランド「龍魂人形社」のドールの多くは、中国伝統的な文化や神話物語から、インスピレーションを得ています。例えば『二十八宿ドールシリーズ』は、中国古代天文学・占星術の「星官二十八宿」から由来しています。また古詩の中にある仙人・精霊を描写する伝説も引用します。戦国時代楚国の詩人宋玉の作品『高唐赋』に登場する神女「瑤姫(ようき)」をモチーフしたドール作品もあります。

作品のテーマを決めた後、私たち開発チームは、沢山の関連資料を閲覧し、調査研究をします。表現したい対象の背景、特徴、細部を隅々まで理解しようとし、その上で私たちならではの美的センスを取り入れ、独自色や斬新さを重視しながら作品を作っていきます。我々のチームはいつも最高な作品を仕上げるよう心掛けております」

──貴社のドールの、特にアピールしたいポイントをご紹介ください

「他社商品との比較はあんまりしたくないですが、弊社のドールは可動性に優れていることには自信があります。また、趣味、審美眼が全然違うドール愛好家でも満足できるように、様々なスタイルのドール作品を送り出して豊富なラインナップを用意しております。どんなドール愛好家でも、弊社の作品の中で、自分の好きなドールを必ず見つけられることを目指しております。

メインブランドの「龍魂人形社」は中国伝統文化がメインテーマで、「華麗」「耽美」「古風」の要素を表現することを重視しています。また「中国風ならではの表現」は、他社ブランドと差別化できるところだと自負しております。

サブブランドの「Charm doll」はもっと童話的な、ファンタジー的な世界観をドールを通して表現しています。弊社は、市場トレンドを見据えた作品創作を重視しながらも、文化的な要素の中に秘められた可能性を引き出すことをとても大事にしています」

──メインブランドの「龍魂人形社」幅広い商品ラインナップを持っていますね、それぞれのコンセプトをお聞かせください

「はい、ではシリーズごとに紹介していきます。

1.「上古伝説」シリーズ
中国伝統的な神話伝説に登場する生き物をモチーフにしたシリーズ作品です

左:「上古伝説」シリーズ 玄帝
右:「上古伝説」シリーズ 白竜

2.「異聞録」シリーズ

キャラクター設定に重心を置くシリーズです。このシリーズに登場するドールたちはどれも外見のビジュアル表現だけでなく、細かいキャラクター設定と背景ストーリーを持っています。機会がありましたら色々紹介していきたいと思います

左:「異聞録」シリーズ 南国の王子
中:「異聞録」シリーズ 赫連容瀛
右:「異聞録」シリーズ 月女

3.「二十八宿」シリーズ

中国古代天文学・占星術の「二十八宿」をモチーフしたシリーズです。二十八宿とは、天球を、28のエリア(星宿)に不均等分割したことを意味します。このシリーズはそれぞれの星宿(せいしゅく)をイメージするドールを作りました

左:「二十八宿」シリーズ 角木蛟
中:「二十八宿」シリーズ 心月狐
右:「二十八宿」シリーズ 危月燕昏

4.「上仙」シリーズ

「仙」という中国式ファンタジーをテーマとしたシリーズ作品です。俗離れした飄々とするする「仙人」雰囲気を漂わせているキャラクター造形が特徴です

左:「上仙」シリーズ 句芒
右:「上仙」シリーズ 烛照

5.「隴中雑記」シリーズ

架空の伝記『隴中雑記』をストーリー背景にして、「隴中という土地で起こった逸話を記録していく」という形でシリーズを構成し、ドール創作と共に、キャラクターたちの独自物語伝記も作ってあります

左:「隴中雑記」シリーズ 画女
中:「隴中雑記」シリーズ 巫真
右:「隴中雑記」シリーズ 德音

6.「九歌」シリーズ

中国戦国時代の楚の政治家・詩人「屈原」の名作『九歌』をコンセプトに、詩の各章に登場する主人公をモチーフしたドールシリーズです。主人公たちの感情と環境の雰囲気を描写対象にし、具現化させるように作り込んでいます

左:「隴中雑記」シリーズ 雲中君
中:「隴中雑記」シリーズ 小湘
右:「隴中雑記」シリーズ 湘夫人

おもは以上六シリーズで、オリジナル商品を展開しております」

──商品の価格帯と、開発時間についてお聞かせください

「弊社のドール商品の値段は、ものによりますが数万円から数十万円まで結構幅があります。開発について、弊社のドール商品はすべて手作業で作っているため、それぞれに時間をかけております。

ひとつの商品につき、開発時間は数ヶ月~半年がかかると考えて頂ければ、と思います。開発のプロセスについて、主に生産・研磨・組み立て・品質検査、この四段階に分けて作業していきます。

本体ボデイはもちろん、衣装・装飾・化粧・靴などもプロの工作員が手作業で制作しています。その期間に膨大な人的リソースと資金がかかり、それを一通り終えてから初めて商品が出荷できるようになります」

──海外のドール市場についてはどう考えていますか?

「国が違いますとそのと文化、風土も違いますし、マーケットにおけるドールのスタイルも違います。また各国のBJDドールメーカーも、それぞれ独自な表現特徴を持っていて、お互いに影響を与えていると感じています。

例えば、韓国のBJDドールは独自の「韓流ドール」らしい造形外見とスタイルを持っています。一方の日本BJDドールは日本らしく、芸術の雰囲気と繊細さを持ちながら、世界中で広く愛される“アニメ・マンガ風”のキャラクター表現を盛り込んでおり、素晴らしく思っています。

BJDドールの市場において、日本は間違いなく先駆者であり、表現手法から製造技術まで優れた分野が沢山あって、私たちは学ぶべき部分が山ほどあるでしょう。また私がとても気に入っているのは、日本のBJDドールは、自分なりの表現特徴を持ちながらも、媒体として日本の伝統的な風貌と文化を世界中の人々伝えられるような優れた作品が多いことです。それこそは弊社が目指し方向でもあります。
また日本のBJDドール愛好者たちの中も、弊社「龍魂人形社」の商品をご購入頂いた方が多数います。弊社としてはとても光栄なことだと思っております。BJDドール事業を携わってから、こうした国際的な文化交流も実現できると実感しています」

──好きな日本アニメ・漫画作品がありますでしょうか。作者またはそれらの作品・作者から受けた影響についてお聞かせください

「日本の優秀なアニメ・マンガ作品を言えば、数え切れないほどありますが、その中自分的では宮崎駿先生の作品が間違いなくNo.1だと思っています、その中一番好きな作品のタイトルを上げれば『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』と『となりのトトロ』です。無限にある想像力から生まれたファンタジー的な美しき世界と心を打たれるような物語、また温かみを感じる絵柄スタイルも独特な感動を与えてくれました。宮崎駿先生の作品を見ると、いつも不思議な新世界の扉を開けてくれたような感覚で、また夢を追い求める勇気を与えてくれます。

武内直子先生の作品『美少女戦士セーラームーン』も、自分がとても気に入って思い出に残る作品です。「魔法少女時代」の代名詞のような作品で、信念のために戦う主人公たちの姿を思い出すと、挫けた時の自分に励ましてくれたような気がします。

そして高橋留美子先生の作品『犬夜叉』も好きです。繊細且つ絢爛華麗の古風的な表現手法と、個性豊かなキャラクターたちの物語に感動しました。

優れたアニメ・マンガ作品は、心の癒しをくれるだけでなく、異文化交流の橋役にもなっていると感じています。より多くの優秀なアニメ・マンガ作品との出会いを期待しますし、優れた作品とのコラボ企画もとても楽しみです」

──他のドールメーカーさんの作品や、印象深い造形作品をお聞かせください

「自分にとって最も印象深いブランドと言えば、やはり20周年の歴史もあるを日本ドールブランド老舗「Volks Doll」の「V-Lieselotte」シリーズ作品です。芸術的価値が高くて愛好家なら、誰でもコレクションしたいと思います。また個人的な好みになりますが、造形師の竹谷隆之先生と安藤賢司先生の「仮面ライダー」シリーズはとても気に入っています。

先生たちが表現した、キャラクターたちが踊り出すようなリアル的な躍動感と、細部まで作り込まれた丁寧な作りにとても感心しています。鑑賞するほど造形の領域において自分の修業はまだ足りないと感じさせられます。他にもお気に入りの作品を言いますと、SOOM社の「Serin&Rico」「River」「Narmer – The Pharaoh」などの作品は、表現が素晴らしく珠玉の作品であると思っています」

──IPコラボの企画商品を多数送り出しているようですが、これらコラボ企画はどうやって実現したのかをお聞かせください。また今後の企画についてお聞かせください

「メインブランドの「龍魂人形社」は多数なIPコラボ実績がありました。多くのコラボ企画は、タオバオ・メーカー・フェスティバル(淘宝造物節)や、ワンダーフェスティバルWF、ドールポイントなどのオフラインイベントの時、弊社の作品を気に入ってくださったIPライセンス業界の関係者様からお話を頂きました。

※「淘宝造物節」の龍魂人形社ブース写真

今年、弊社サブブランドの「CharmDoll」が、幻想的な色表現に長けた韓国の人気イラストレーター・INPLICK先生(@INPLICK)と初のBJDドールコラボが実現できました。年内にリリースすることを目標にして開発を進めています。まだ公表できませんが、新鋭漫画作家、人気イラストレーター、人気ゲームとのコラボ企画を多数進めていますので、ぜひご期待ください」

──今後の事業ビジョンについてお聞かせください

「メインブランドである「龍魂人形社」は、中国伝統文化要素を定番スタイルとして、ドールの創作し続けたいと思っています。サブブランドの「CharmDoll」はより多くな表現スタイルにチャレンジすべく、若手クリエイター、イラストレーターたちとコラボし、豊かな想像力と世界観を具現化していきたいと思っております。高品質と表現力に誇れる中国発のBJDドール会社になれるように頑張りたいと思っています」

──最後に、日本のファンたちへ一言をお願いします

「弊社「龍魂人形社」「CharmDoll」のドールたちをご購入して頂いた皆様に、心から感謝しております。より良い商品を皆様にお届けできるよう、日々精進していきたいと存じております。引き続きよろしくお願い申し上げます!」


現在、ホビーテレパ運営会社の株式会社ジニヤズは、龍魂人形社様とコラボ企画を多数進行しております。最新情報はSNSにて随時告知していきますのでぜひお楽しみにしてください!

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